賃貸住宅管理を取り巻く環境は、この数年で大きく変化しました。法整備が進み、管理業務の透明化や適正化が求められる中で、専門知識を有する人材の重要性は年々高まっています。その象徴ともいえるのが、賃貸不動産経営管理士試験の受験者数の増加です。
本記事では、令和7年度年度試験概要(一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会公表資料)をもとに、最新データを踏まえながら、この資格の現状と将来性について整理します。
1.試験実施体制と制度的背景
賃貸不動産経営管理士試験は、国土交通大臣の登録を受けた試験実施機関である一般社団法人 賃貸不動産経営管理士協議会が実施しています。
賃貸住宅管理業の適正化を目的とする法制度の整備を背景に、管理業務の中核を担う専門資格として制度的位置づけが明確化されました。国家資格になり、賃貸住宅管理業に登録する業者にとっては、業務管理者の設置が義務付けられていることが、近年の受験者増加の大きな要因といえます。
2.令和7年度試験概要
令和7年度試験の主な概要は以下の通りです。
・試験日:令和7年11月16日(日)
・試験時間:13時00分~15時00分(120分)
・出題形式:四肢択一式
・出題数:50問(登録講習修了者は45問)
・受験料:12,000円
・受験資格:なし(誰でも受験可能)
出題範囲は大きく以下の分野に分類されています。
1.管理受託契約に関する事項
2.維持保全に関する事項
3.家賃等の金銭管理に関する事項
4.賃貸借契約に関する事項
5.賃貸住宅管理業法等の法令
6.その他管理実務に関する事項
法律知識だけでなく、実務判断能力が問われる構成になっている点が特徴です。
3.受験者数は増加傾向にある
令和7年度試験の受験者数は約3万人規模となっており、ここ数年で着実に増加傾向を示しています。
国家資格になったこと、業務管理者要件の1つとして定められたこと、不動産業界内での評価が上がっていることなどが背景にあります。
特に注目すべきなのは、若年層だけでなく40代前後の実務層の受験が多い点です。平均年齢は40代前半で推移しており、実務経験者がキャリアアップや法令対応力強化を目的に受験していることが読み取れます。
これは「将来性のある資格」というよりも、「今の業務に直結する資格」として認識されていることを意味します。
4.合格率と合格基準
令和7年度の合格率は29.5%。決して高い数字ではなく、一定の学習量が求められる資格です。
令和7年度の合格基準は以下の通りです。
・一般受験者:50問中38問以上正解
・講習修了者:45問中33問以上正解
ここで重要なのが「5問免除制度」です。
5.5問免除制度と合格率の関係
指定の講習を修了した受験者は、本試験50問のうち5問が免除され、45問での受験となります。
データを見ると、登録講習修了者(5問免除者)の方が、一般受験者よりも合格率が12.3%高い傾向にあります。
その理由として考えられるのは次の3点です。
1.事前講習により基礎知識が体系的に整理されている
2.試験範囲の重要論点を事前に学習している
3.受験意欲が高く、計画的に準備している層が多い
単に「問題数が少ないから有利」という単純な話ではありません。講習によって理解の土台を固めたうえで本試験に臨んでいるため、結果として合格率が高くなる構造になっています。
これから受験を考えている方にとっては、5問免除制度を活用するかどうかは戦略上重要なポイントといえます。
6.なぜ受験者は増えているのか
受験者増加の背景には、次のような要素があります。
第一に、賃貸住宅管理業の社会的責任が増していることです。オーナー保護、入居者保護、サブリース問題への対応など、管理会社に求められる説明責任は年々強まっています。
第二に、法令理解の必要性です。賃貸借契約、原状回復、修繕義務、敷金精算など、トラブルの多くは法律理解不足から生じます。資格学習を通じて体系的に法令を理解することは、実務上の大きな武器になります。
第三に、キャリア形成です。不動産業界では宅建士が代表的資格ですが、管理分野に特化した専門資格としての位置づけが明確になったことで、差別化要素として取得を目指す人が増えています。
7.難易度と学習戦略
合格率約3割という数字は、決して易しい試験ではないことを示しています。
特に得点差が出やすいのは、
・管理委託契約
・重要事項説明関連
・賃貸住宅管理業法
・賃貸借契約の法的論点
これらは暗記だけでは対応できず、条文理解と事例判断力が求められます。
一方で、出題範囲は毎年大きく変動するわけではありません。過去問分析を徹底し、頻出論点を押さえることが合格への近道です。
講習を受講することで、重要論点の整理が進み、効率的な学習が可能になります。データでも講習修了者の合格率が高いことから、学習投資として検討する価値は高いといえます。
8.今後の展望
今後の展望を考える上で重要なのが、賃貸住宅管理業における業務管理者設置義務です。
賃貸住宅管理業法に基づき、国土交通大臣の登録を受けた賃貸住宅管理業者は、営業所または事務所ごとに1名以上の「業務管理者」を設置することが義務付けられています。
そして、その業務管理者となるための要件の一つが、賃貸不動産経営管理士であることです。
つまり、この資格は単なるスキル証明ではなく、「法令上の配置要件に関わる資格」でもあるのです。
登録業者数が増加すれば、それに比例して業務管理者の需要も増加します。各事務所ごとに配置が必要である以上、有資格者の存在は企業運営に直結します。
この点が、受験者増加の根本的な理由の一つといえます。
資格取得者は、会社にとって「いると望ましい人材」ではなく、「法令上必要となる可能性のある人材」です。制度的裏付けのある資格であることが、将来的な安定需要につながっています。
まとめ
令和7年度試験データから読み取れるポイントは次の通りです。
・受験者数は増加傾向
・合格率は約3割
・5問免除講習修了者の方が合格率が高い
・実務直結型資格としての価値が上昇している
賃貸不動産経営管理士は、単なる肩書きではなく、管理業務の質を支える専門資格です。統計データは、その社会的評価が着実に高まっていることを示しています。
これから受験を検討している方は、最新の試験概要を確認し、自身のキャリア設計と照らし合わせながら、計画的に準備を進めることが重要です。





