【レポート】東京郊外の空き家事例をもとに探る、空き家問題の現状と今後

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近年、日本全国で増加を続ける空き家。少子高齢化や人口減少、相続の問題など複雑な課題が絡み合う場合も多く、その解決は一筋縄ではいかないのが現状です。町の景観への影響や防犯面の懸念もあることから、全国で様々な自治体・企業などが空き家の有効活用について検討を進めています。今回は東京郊外の空き家の事例を紹介しながら、空き家になった具体的な経緯や管理の課題について解説します。

東京都の空き家数の推移

国土交通省が2024年9月に公表した「令和5年住宅・土地統計調査」によると、全国の空き家数は900万2千戸で過去最多となりました。2018年の調査では848万9千戸だったことから、5年間で51万3千戸も空き家が増加しています。

出典:令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果 p.2,p.4(国土交通省)

空き家900万戸のうち、一戸建ては352万3千戸でおよそ40%を占めます。賃貸や売却されるのを待っている状態の空き家や、別荘などの二次的住宅に利用されるものはごくわずかで、80%の一戸建て住宅は誰も住んでいない状況であることがわかります。

東京都の現状に目を向けると、2018年は86万6千戸だった空き家は、2023年には89万7千戸となりました。「空き家問題は地方特有のもの」と考えられがちですが、実は都市部でも空き家が増え続けていることがわかります。

 

2018年 2023年
東京都の空き家数 866,000 897,000
東京都の空き家率 10.6% 10.9%

出典:令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果 p.14(国土交通省)

平成30年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要 p.11(国土交通省)

東京郊外の空き家の事例:空き家が直面する課題と未来の選択肢

実際に東京都ではどのような経緯で空き家が増えているのでしょうか。

今回お伺いしたのは、東京都郊外にある一戸建ての空き家です。ここには高齢のご夫婦が住んでいましたが、3年前に他界しました。すでに子どもたちは独立してそれぞれの生活を持っており、荷物整理を徐々に進めながら実家を残している状況です。

不動産業の現地業務支援サービス「gigbase(ギグベース)不動産ソリューション」を展開するギグベース株式会社 田中様によると、「一人暮らしの高齢者が入院したり施設に入ったりして、一戸建てがそのままになっているケースは多い」と言います。その後に家族や親族が移り住む場合もありますが、荷物の片付けやリフォームなどの負担も大きく、古い住宅ほど新たな入居者を迎える障壁は高いと言えるでしょう。

※空き家のサンプル写真

今回の空き家は、昭和56年5月以前に旧耐震基準で建てられた一戸建てです。経年劣化により、雨漏りをはじめとする修繕が必要な箇所が見受けられます。そのため、独立した子どもたちがこの家に住む場合には、建て替えが必要になる可能性があります。

現時点では、売却、取り壊し、リフォーム後の賃貸化といった選択肢も視野に入れつつ、時間をかけて遺産整理を進めていく方針です。

売却も一つの選択肢として考えられますが、現時点では土地や建物の価値を見積もりつつ、地価の上昇や物価の動向を踏まえて、数年後に売却した方が高く売れる可能性が高いという見方も増えています。そのため、今すぐに売却するのではなく、空き家を維持しながら市場の変動を待つ選択をする人も少なくありません。

また、空き家の管理にあたっては、遺品整理も重要な作業の一つです。価値のある調度品などがあれば、思い切って捨てることができず、整理には時間がかかる場合があります。しかし、孫世代が結婚するタイミングで相続や整理を進め、必要であれば建て替えを行うことを考えている方も多いため、現段階で急いで整理を進める必要はありません。

空き家を維持するためには、固定資産税や火災保険、光熱費の基本料金などを支払う必要があり、一定のコストがかかりますが、例えば年間30万円維持費がかかっても、10年で300万円程度の負担であれば問題なく維持できる層も一定数存在します。このような背景から、空き家を管理し続ける選択をする人々も増えてきているのが現状です。

東京郊外の空き家管理の現状

空き家を良好な状態で維持するためには、週1回程度の通風・通水を行うことが望ましいとされています。住宅内に風を通すことで湿気やカビの発生を抑え、建物の劣化を防ぐことができます。通風の方法として換気扇を常時稼働させることも考えられますが、「電気代が思ったよりもかかるため、現実的ではない」と田中様は話します。定期的な手入れが住宅の寿命を延ばす重要なポイントです。

空き家管理では、家具や家電の盗難を心配する家主も多いのが現状です。そのため、管理会社側はしっかりと家主様に管理の状況を説明し、信頼関係を築くことが求められます。特に遠隔地の空き家では、管理状況が見えにくいため、しっかりとしたコミュニケーションが必要です。

空き家管理の選択肢としての「gigbase」

こうした課題を解決するためのサービスが「gigbase不動産ソリューション」です。

不動産管理会社やオーナーに代わり、現地での作業を担う支援サービスで、約6万人の「ギグタレント」が登録しています。

「ギグタレント」とは、スキマ時間を活用して副業や単発作業を行う方々のことで、空き家管理をはじめとする幅広い業務を担当。家主の負担を軽減すると同時に、地域の雇用創出にも貢献しています。

安心の理由:「gigbase」の充実した研修体制 

「gigbase」では、ギグタレントに対し、身だしなみや言葉遣い、電話対応の教育をはじめ、現地リーダーによるOJT形式の研修を実施しています。さらに、稼働後も抜き打ち検査や定期研修を行い、サービスの品質を維持。お客様からのフィードバックを活かし、常に高品質な対応を徹底しています。

空き家を更地にできない背景

自治体によっては建物を解体する際の補助金を出している市町村もあります。今回の空き家がある地域には解体補助はありますが、解体費に比べて非常に少ない金額であり、残りの解体費用はすべて自己負担となります。家主の負担が大きい建物の解体と更地の税金を支払うよりも、空き家のまま固定資産税を支払った方が負担が少ないことから、更地にしないという判断のもと管理を続けている現状があります。

今後も全国で増え続ける空き家

近年、空き家問題は一戸建てだけでなく、マンションやアパートなどの共同住宅でも増加しています。「人口減少が続く中で、リフォームなどの費用負担をしても新しい入居者が見つからないリスクがあり、以前の住民が暮らしたままの状態で放置されてしまうケースも少なくありません。」とギグベース株式会社の田中様は説明します。

空き家を放置することなく、適切に管理し有効活用の道を探ることが求められます。例えば、両親が元気なうちに相続対策をすることや、空き家バンクへの登録、リフォームや売却で新しい持ち主を探すなどが考えられる対応策です。また、空き家を所有する上で知っておくべき三つのポイントをまとめたので、以下を参考にしてみてください。

空き家管理の解決策:知っておくべき3つのポイント

空き家を適切に管理・活用するためには、以下の3つのポイントを押さえておくと、空き家を無駄にせず、リスクを減らすことができます。

①相続した不動産を3年以内に売却する際の特例について

相続により取得した不動産を売却する場合、一定の条件を満たすことで税負担を軽減できる特例があります。この制度は、取得費加算の特例または3,000万円の特別控除を受けられる可能性がありますが、どちらか一方しか適用できないため、それぞれの特徴を理解することが重要です。

出典:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

出典:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

② 自治体による解体補助

空き家が老朽化している場合、自治体による解体補助を利用できる場合があります。この補助を受けて解体した後、土地を売却する方が有利になることもあります。自治体の条件や補助金額は地域によって異なるため、事前に確認しておくとよいでしょう。

③ 空き家対策特別措置法

空き家が一定の条件を満たすと、「空き家対策特別措置法」に基づき、空き家が「特定空き家」認定を受けることがあります。認定されると、更地にしている場合と同様に課税される可能性があるため、空き家を長期間放置することはリスクとなります。早めに対策を取ることが大切です。

出典:空家等対策の推進に関する特別措置法関連情報(国土交通省)

これらの対策を踏まえ、空き家を適切に売却・活用することで、将来的な負担を軽減することができます。

空き家にはリスクも伴いますので、売却できる場合は早めに対応することが大切です。こうした対応に関して迷っている場合は、不動産の専門家に相談することをお勧めします。

売却に関するご相談は全宅管理に、どうしたら良いかわからない場合は、今回取材に協力してくださったギグベース株式会社にご相談ください。