令和7年9月5日に賃貸住宅管理業のあり方の検討に係る有識者会議の第1回が開催されました。
有識者会議開催の経緯
昨今、賃貸住宅を取り巻く環境が大きく変化する中、賃貸住宅管理業法の新法施行から丸4年が経過し、本制度が定着しつつあります。
その一方で、コロナ禍を経た日常の暮らし方・働き方の変化などから入居者ニーズが多様化し、管理業務も複雑化している状況がみられるところです。
そこで、今般、今後の賃貸住宅管理業のあり方について検討を行い、制度の普及促進や必要な改善策について、令和7年度内に一定の方向性を取りまとめることとなりました。
構成メンバーは?
座長に明海大学不動産学部の中城康彦学部長を迎え、7つの不動産管理業に関わる団体の理事と2名の弁護士、大学教授、消費生活コンサルタントで構成されています。
<座長>
中城 康彦 明海大学不動産学部 学部長
<委員>
泉 藤博 公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会 副会長
稲葉 和久 一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会 常務理事
太田 秀也 一般財団法人国土計画協会 顧問 客員研究員
熊谷 則一 涼風法律事務所 弁護士
齊藤 広子 横浜市立大学国際教養学部 教授
佐々木 正勝 一般社団法人全国賃貸不動産管理業協会 会長
末永 照雄 公益財団法人日本賃貸住宅管理協会 直前会長
塚本 智康 ことぶき法律事務所 弁護士
土田 あつ子 公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会 消費生活コンサルタント
出口 賢道 公益社団法人全日本不動産協会 常務理事
宮野 純 公益社団法人全国賃貸住宅経営者協会連合会 会長
本会の佐々木会長も委員として有識者会議に参加しております。
第1回の検討内容
本有識者会議設置の意義、賃貸住宅管理業法の施行状況、今後の検討内容について報告がなされました。
賃貸住宅管理業法はなぜできた?
住宅の管理業務等の適正化に関する法律(賃貸住宅管理業法)が施行された背景には、賃貸住宅は賃貸住宅志向の高まりや単身世帯、外国人居住者の増加等を背景に、今後も我が国の生活の基盤としての重要性は一層増大していくこと。
一方、賃貸住宅の管理は従前、自ら管理を実施するオーナーが中心であったが、近年、オーナーの高齢化や相続等に伴う兼業化の進展、管理内容の高度化等により、管理業者に管理を委託等するオーナーが増加したこと。
さらに、賃貸経営を管理業者にいわば一任できる“サブリース方式”も増加しました。
しかし、管理業者の介在が増加する中、オーナーあるいは入居者とのトラブルが増加し、特に、サブリース方式では、家賃保証等の契約条件の誤認を原因とするトラブルが多発し、社会問題化しており、そういった問題を規制するために施行された法律になります。
サブリース事業者と所有者との間の賃貸借契約の適正化に係る措置
トラブルを未然に防止するため、全てのサブリース業者の勧誘時や契約締結時に一定の規制を導入。
サブリース業者と組んで勧誘を行う者(勧誘者)も、勧誘の適正化のため規制の対象となりました。
違反者に対しては、業務停止命令や罰金等の措置により、実効性を担保しています。
こちらについては令和2年12月15日に施行されました。
賃貸住宅管理業に係る登録制度の創設
賃貸住宅における良好な居住環境の確保を図るとともに、不良業者を排除し、業界の健全な発展・育成を図るため、賃貸住宅管理業者の登録制度を創設されました。
管理戸数200戸以上委託を受けて賃貸住宅管理業務を行う事業者に国土交通省の登録を義務付けました。
こちらについては、令和3年6月15日に施行されました。
賃貸住宅管理業登録事業者数の推移
令和3年6月から賃貸住宅管理業法の登録制度が施行され、200戸以上を管理する賃貸住宅を営んでいる者は登録が義務化され、登録業者は一貫して増加傾向にあり、令和7年7月31日時点では、9,987件です。

賃貸住宅理業法の登録・講習等の状況
業所ごとに設置が義務付けられる業務管理者の有資格者数は年々増加。
業務管理者の資格要件は、以下の3つのルート。資格要件を満たす者は現在10万人を超えます。
・新たな賃貸不動産経営管理士試験に合格し、2年以上の実務経験を有する者
・かつての賃貸不動産経営管理士の資格を持ち、移行講習を修了した者
・宅地建物取引士で指定講習を修了し、2年以上の実務経験を有する者
賃貸住宅管理業法施行後の効果
オーナーとサブリース業者・管理業者とのトラブル経験(賃貸住宅の家主(オーナー)へのアンケート調査から)については、賃貸住宅のオーナーとサブリース業者との、トラブル経験割合は法施行後減少傾向にあり、賃貸住宅のオーナーと管理業者とのトラブル経験割合も減少しています。

賃貸住宅管理業法における登録業者の属性
登録業者の3割から4割は、登録義務の無い管理戸数200戸未満の賃貸住宅管理業者です。
登録された賃貸住宅管理業者は、法令で求められる、「業務管理者の選任」、「管理受託契約の締結前の書面の交付(重要事項説明)」、「財産の分別管理」、「委託者への定期報告」等の義務が発生します。
令和4年6月時点では、登録業者の29.7%(1,908件)が、登録義務のない賃貸住宅管理業者であったが、令和7年5月時点では、その割合が36.6%へ(3,624件)と増加。特に、小規模事業者の構成比が拡大傾向です。

令和6年度全国一斉立入検査結果
法令の周知、改善の促進を主な目的として全国187社※に対して立入検査を実施しました。
(令和5年度179社)、うち127社に是正指導を行っています。(令和5年度106社)。
検査の結果、過半数の事業者において不適正な状況を確認したが、全体的には形式的な不備が多く、全て改善が確認されているため行政指導にとどまっています。
※賃貸住宅管理業のみを行っている事業者は87社、賃貸住宅管理業を行い、かつ特定転貸事業者(サブリース業者)でもある事業者は96社、賃貸住宅管理業を行っていない特定転貸事業者は4社。
立入検査の結果は下記URLより
報道発表資料:賃貸住宅管理業者及び特定転貸事業者への全国一斉立入検査結果(令和6年度) – 国土交通省
今後の有識者会議での検討事項
賃貸住宅管理業法における今後の検討事項①
サブリース業者とのトラブルの主な内容は、「家賃の見直しなどの条件変更」、「修繕の箇所や費用負担」、「物件の収入や費用、契約内容の変更についての不十分な説明」など、オーナーとサブリース業者とのトラブルが一定割合存在しています。
賃貸住宅管理業法における今後の検討事項②
管理業者とのトラブルの主な内容は、「管理業者がどこまで対応してくれるか不明」、「入居者への説明・対応が不十分」、「賃料・敷金の入金の遅延」など。賃貸住宅のオーナーは管理業者に対して「家賃・費用等の契約内容を専門的知識を持つ者からの説明」、「契約締結時の十分な説明」などを期待されています。
賃貸住宅管理業法における今後の検討事項③
賃貸住宅管理業者は、従業員が行う管理業務等の指導・監督を行うために必要な知識及び能力等の一定の要件を備える者(業務管理者)をその営業所又は事務所ごとに一人以上選任し、当該者に一定の事項についての管理及び監督を行わせなければなりません。
業務管理者は、賃貸住宅管理業法で求められている「管理業全般の管理・監督」以外にも、管理業務の知識・経験が豊富な者として、「重要事項説明・交付」、「契約の締結・更新・解約」などの重要な場面での業務が求められています。
賃貸住宅管理業に関する主な検討事項(案)
そのような背景を踏まえ、本有識者会議で検討されるのは、以下の4つ。
①賃貸住宅管理業者が提供するサービスの見える化、賃貸住宅管理業としての報酬等
②賃貸住宅管理業の任意登録の促進
③業務管理者の資格要件のあり方、「賃貸不動産経営管理士」の社会的認知度の向上
④管理業の地域貢献(コミュニティーづくり、高齢者・子育て世帯・二地域居住者・外国人など多様な主体の共生社会の形成)
賃貸住宅管理業者が提供するサービスの見える化、賃貸住宅管理業としての報酬等
賃貸住宅経営者(オーナー)に尋ねた、管理業者とのトラブルの内容は、「管理業者が、どこまで対応してくれるのかよくわからない」という回答がもっとも多かったため、管理業者のサービスの見える化が十分ではないという状況が考えられます。
宅建業法では、「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」が令和6年7月1日に改正され、媒介報酬とは別に報酬を受け取ることが可能となりました。
また、空き家の管理報酬についても、媒介報酬とは別に受け取ることが可能と不動産業者による空き家管理受託のガイドラインに記載されています。
賃貸住宅管理業の任意登録の促進
賃貸住宅管理業のさらなる質の向上に向けては、より良いサービスを提供する質の高い管理業者が賃貸住宅市場で選ばれる環境を整備していくことが重要です。
賃貸住宅管理業法に基づき登録された管理業者は、業務管理者の選任、オーナーへの重要事項説明・契約書面の交付・定期報告、財産の分別管理などの義務が発生します。
また、国土交通省が立入検査等により法令の遵守状況の確認、必要に応じて行政指導や改善報告を求めています。
登録された管理業者が提供するサービスは国の指導監督のもと一定の質が確保されることになるので、賃貸住宅市場における登録業者の活用をより一層推進していくことが重要となります。
業務管理者の資格要件のあり方、「賃貸不動産経営管理士」の社会的認知度の向上
賃貸住宅管理業者を対象として、賃貸住宅管理業の制度運用に関する現状と課題の把握を目的に実施したアンケートによると、業務管理者を賃貸不動産経営管理士の有資格者に限定すべき理由としては、専門知識によるトラブル回避が期待できることが約79%、家主や入居者に対する安心感・信頼感を与えることが約64%を占めました。
また、宅建士ルートを廃止しても構わない理由として、「既に有資格者がいる」や「新たに資格を取得すればよい(廃止までに指定講習を受講すればよいとの意見を含む)」との意見が多数ありました。
小規模事業者(管理戸数200戸未満、従業員5人以下)では、宅建士ルート廃止に反対する割合が約7割。その主な理由は、人材確保が困難(約77%)、管理業登録を断念せざるを得ない(約35%)であり、特に新規登録を目指す事業者にとって、宅建士ルートの廃止は参入障壁となりえます。
当面は宅建士ルートを存続させる方向で検討していきます。
また入居者における、「賃貸不動産経営管理士」の認知度をみると、「知らない」が80.7%と特出して高く、賃貸不動産経営管理士の認知度を上げていく必要があります。
管理業の地域貢献(コミュニティーづくり、高齢者・子育て世帯・二地域居住者・外国人など多様な主体の共生社会の形成)
不動産ビジョン2030における管理業のあり方では
・「不動産最適活用」を根源的に支える役割
・ 幅広いサービスを展開し、居住・生活環境向上
・ オーナーの投資判断の支援に寄与、管理情報の蓄積・活用・ 従業員の働き方改善、管理業務の効率化や付加価値の高いサービス提供
が記載されており、
地方創生2.0基本構想や「ひと」と「くらし」の未来研究会とりまとめでも地域の新たな価値や可能性を創造していくことが必要と記載されています。
国土交通省では、地域価値を共創する不動産業アワードが開催し、素晴らしい取組を多く行っている企業を表彰しています。
次回第2回では、それぞれの団体がプレゼンテーションを行い、議論を加速させていくこととなりました。
資料は下記国土交通省のHPよりご確認ください。





