きらめき不動産 岸さんに学ぶ「女性が不動産業界で自分らしく輝くために大切なこと」

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全国賃貸不動産管理業協会では、これから就職活動を控える学生の皆さんに不動産業界の魅力を知ってもらうため、共立女子大学 建築・デザイン学部 建築・デザイン学科 高橋ゼミナールにおいて講演会を開催しました。

ご登壇くださったのは、きらめき不動産 取締役の岸 明日美さんです。

不動産業界は全体としてまだまだ男性の比率が高く、女性の活躍が十分でない側面もあります。しかし、そんな中でも岸さんは持ち前のバイタリティで自分らしくキャリアを切り拓いてきました。

今回は岸さん自身が結婚・出産・育児といった女性のライフイベントにしなやかに対応しながら活躍してきた事例とともに、これから社会人になる学生の皆さんが持つべき心構えや、不動産業界のリアルな姿についてお話いただきました。

 

 

役者から賃貸管理業へ!ゼロから始めた新たなキャリア

私はきらめき不動産で取締役として賃貸管理部の業務を統括しています。もともとは不動産とはまったく関係のない仕事をしていて、15歳の時に庵野秀明さんの映画「ラブ&ポップ」でデビューし、20代で結婚するまで役者をしていました。

役者仲間と一緒に映像作品を作ったり、バーを開店したりして「思い立ったら即実行」な10代・20代を歩みました。

結婚後に子どもが生まれてしばらくは育児中心の生活を送り、あるとき知り合いだった当社の代表に「賃貸管理部を作ってみない?」と誘われました。

不動産業のことはまったく知らない状態でしたが、「やります」と答えて入社したのが始まりです。

しかし、社会人経験がないために「社会人のマナーとは?」という状態からのスタートでした。当時28歳でしたが、挨拶の仕方や名刺交換の仕方も知らず見るものすべてが新鮮だったのを覚えています。もちろん賃貸管理についても素人なので、業界用語の勉強や同業他社に話を聞きに行って学ぶこともしました。

そんなゼロからのスタートでも代表が学ぶ時間の猶予を与えてくれたおかげで、自分で色々な知識を得ながら賃貸管理部を立ち上げました。当時の管理物件数は80戸ほどでしたが、今では1200戸にまで伸ばすことができました。

オーナーと入居者をつなぐ賃貸管理の仕事

不動産業界の規模は、建設業も含めると市場で2番目の大きなマーケットです。私たちの身近にある自動車や医療・外食・物流よりも大きいんですね。

ただ、ひとくくりに不動産と言っても、仕事内容はすべて違います。商業施設やオフィスビルの開発を行うデベロッパーや、新築戸建てを扱うハウスメーカー、賃貸仲介の会社、マンションなどの収益物件を扱う会社など様々です。

どの会社に入社するかで担当業務も当然異なるため、自分がどの仕事をしたいのかをしっかり考えたうえで就職活動をすることをおすすめします。

当社は中古の収益物件を扱い、不動産投資のアドバイスや売買・賃貸物件の管理を行っています。その中でも私が統括する賃貸管理部は、一言で言うと「賃貸物件に住む人とオーナー様とをつなぐ仕事」をしています。例えば賃貸マンションでお風呂のお湯が出なくなったら管理会社に連絡しますが、その電話に対応するのが私たちの仕事です。

設備の修理が必要な場合は、オーナー様に修理をしていいかどうかと、費用面の負担について合意を取ります。その後に専門業者を手配して現場に駆けつけてもらいます。そういったオーナー様・入居者様・業者という三者間を取り持つのが主な業務内容です。

リフォームの提案からクレーム対応まで、マルチに活躍する賃貸管理業

賃貸管理はお部屋のメンテナンスだけでなく、家賃や建物全体の管理も求められます。

例えば入居者様の中でゴミ出しのルールを守らない方がいる場合は「ゴミの分別をきちんとしましょう」と通知を出すこともします。いわゆるクレーム対応と言われる業務も、対応の幅が広いので仕事内容が多岐にわたるのが特徴です。

コツコツと物事をこなすのが得意な人や、感謝されることにやりがいを見出せる人にはとても楽しい仕事です。

また、物件管理では修繕・リフォームも業務範囲になります。修繕では、内装・外装ともに入居者様が安全かつ快適に住めるよう気を配ります。中には築40年以上が経過し、物件の前の持ち主がメンテナンスをしなかったために激しい劣化が進んでいる物件もあります。外壁がはがれ落ちそうな場合などは、入居者様だけでなく近隣住民にも危険が及ぶ可能性があり、早急な対処が必要です。

リフォームでは、昔ながらの内装や間取りを新しく作り変えるため、床・壁紙・キッチン・棚・照明などのリフォーム案をオーナー様に提案します。部屋全体のトーンを合わせるなどのデザイン性も求められる仕事です。

私の場合は定期的に不動産業界向けの展示会に出かけ、内装のトレンドや新しい材料を把握してリフォームの提案に役立てています。

管理コストを抑えつつ、安心安全な住まいを提供したい

修繕・リフォームどちらにも言えることですが、オーナー様は費用がどれくらいかかるのかを最も気にします。弊社の場合は投資用なのでほとんどのオーナー様は物件をずっと手元に置くことは考えておらず、いつか売却して利益を得るために所有しています。つまり、物件に問題が起きた場合もきちんと直すよりは「コストパフォーマンスが高い形で直したい」と考えているのです。

そのため、修理費用をできるだけ抑えつつ、入居者様が安心して住めるように調整を進める必要があります。施行業者とのやりとりで「ここは絶対に直すべき」という項目を話し合い、修理範囲を決めて費用とともにオーナー様へ説明するのも私たちの仕事です。お金を出すのはオーナー様ですから、予算内でうまくやりくりするのが難しい部分かもしれません。

当社のお付き合いのあるオーナー様は投資家ですから、ある程度オーナー様と話せる知識が求められます。

少なくとも不動産投資については「今の物件は近いうちにこういうメンテナンスが必要になるので、5年後に売却した方がいいですね」といった話ができるのが理想です。そうすればオーナー様も安心して物件を任せてくれますし、信頼関係ができると他社で買った物件も当社に管理を任せたいと言ってくださる場合もあります。

不動産業界にも女性が輝けるステージはある!

不動産業界は全体的に男性比率が高いのですが、先日行った現場では女性が床とクロス貼りを一人で仕上げていました。まだまだ業界内では珍しい存在ですが、中にはそうして活躍している女性もいます。

修繕やリフォームでは、定められた作業がきちんと終わっているかを確認する完了確認という工程があり、それを女性社員が担当する会社も増えています。女性の方が細かなところに気がつきますし、仕事も丁寧だからです。部屋全体の雰囲気はもちろん、掃除がきちんとされているかチェックするためにあえて女性を現場に派遣する場合も多いです。

ただ、施工業者と対等に話すためには、建築の知識がある方が有利です。例えば入居者様から「トイレの水が流れっぱなしになる」と連絡があった場合、トイレのタンクにある部品の名称を知らなければ、業者との会話が成立しません。業者の意見を聞きながら、入居者様が安心して暮らせるには何が最善か、またオーナー様の費用負担を最小限に抑えるにはどうすべきかを瞬時に判断する力が求められます。入社してすぐにそれができる必要はありませんが、日々の仕事を通して少しずつ知識を蓄えることが大事です。

 

 

「知識が未来を切り開く」15歳で学んだ大切な教訓

私は15歳で芸能界に足を踏み入れましたが、そのとき周りの大人に「無知は罪」と言われたのがとても印象に残っています。勉強もほどほどだった15歳の私は、本当に何も知らず「それぐらい知っておかなきゃダメだよ」と何度も言われました。

その度に恥ずかしく思い、わからないことに出会ったらすぐ調べる、または人に聞くことを習慣にしました。だからこそ今の自分があり、未知の領域だった不動産の仕事ができているんだと思います。

今はスマートフォン一つで何でも調べられて、情報があふれる世の中です。色々な情報の中で必要なものを選んでインプットし、その知識が正しいかどうかを現場で聞いて確かめれば、より質の高い知識が得られます。どんな仕事でもこれを繰り返すことが大事です。常に知ろうとする努力をしながら社会人として成長してほしいと思います。

これからは個人の知識と能力で仕事をする時代がやってきます。自らの持ち味やアイデアを大事にしながら、やりたい仕事は何なのかを考えた上で職業を選択する必要があります。言われたことだけをするのがつまらないと感じる人は、ベンチャーに行くのもいいでしょう。

教育制度の整った会社で基礎知識を得たい人は、大手を目指すのもありです。数年間その会社で働いた後、やりたいことを見つけて転職するのも一つの方法ですね。皆さんには多くの選択肢がありますので、ぜひ広い視野を持って考えてほしいと思います。

仕事と家庭のバランスをとり、自分らしいキャリアを築くために

ここまで不動産業界について話してきましたが、女性がキャリアを考える場合は「子供を産む・産まない」「何歳で子どもを産みたいか」は少し考えておくといいですね。

子育てには体力が必要ですし、時には自分や旦那さんの両親の助けが欲しい場面もあります。ところが、当然ながら両親も自分も年齢を重ねれば体力が落ちていきます。

そう考えると、欲しい子どもの人数と「自分は何歳まで働けるのか」をあらかじめ逆算しておかないと、成人まで責任を持てない可能性もあります。これは正解があるものではないので、色々な人生のモデルを見ながら長い目でビジョンを検討してみてください。

当社では子育て中の女性にパートとして働いてもらっていますが、子どもの体調不良や学校行事などで休みが必要になる場合もあります。ですので、パートさんたちには「いつ休んでもいいし、いつ出勤してもいいよ」と伝えています。1時間でも2時間でも好きなときに来て仕事をしてもらいます。

そういう女性は、仕事はきっちりこなしてくれて大変助かっています。人手不足の今、こんな働き方を受け入れる会社も徐々に増えていくと思うので、皆さんも「私はこういう働き方をしたいです」とどんどん声を上げ、家庭と仕事とのバランスを大事にしながらキャリアを作ってほしいと思います。

人生全般に言えることですが、自ら発言したりアクションを起こさないと、望む結果や発見は得られません。若い頃の私は会社で働くなんて想像もしませんでしたし、取締役になることも予想外の道でした。

何があるかわからないのが人生ですが、それまでの経験は必ず自分の身になると実感しています。未来への道は思わぬところに拓けていますので、広い視野で自分がどうなりたいかを探し、人生を楽しんでください。本日はありがとうございました。

参加学生の声

今回の講演会に参加した学生の皆さんに、岸さんのお話を聞いた感想を伺いました。

 

 

今回のセミナーを聞いて不動産業界の印象は変わりましたか。

不動産業界の実態を踏まえつつ、岸さんが経験したポジティブな側面も伝えてくださったので、とても参考になり業界への理解が深まりました。賃貸物件は古くなれば建て直すのが当たり前なのかと思っていましたが、オーナーさんの事情によっては限られた予算で対応する場合もあるとわかり、少ない予算でやりくりする岸さんのリアルな葛藤も知ることができて勉強になりました。

 

結婚・出産・育児などのライフイベントを踏まえた働き方について学びはありましたか。

大学の就職セミナーで「ライフプランを考えましょう」という話を聞いたことがあって、ぼんやりと将来のことを考えていましたが、今日のお話を聞いて改めて先のことをしっかり考えなければと感じました。今の自分は就職することが目標になってしまっているので、岸さんが紹介していた「いつ子どもが欲しいか」といった逆算での考え方も参考にしつつ、長いスパンで人生プランと自分の働き方を考えたいと思います。

 

今回のセミナーを聞いて、皆さんが思い描く理想の職場や幸せな働き方について考えるきっかけになりましたか。

岸さんのように、自分がしたいことを発信できる女性になることが大事なのかなと思いました。きらめき不動産のように、子育て中の女性が1時間でも2時間でも、好きなときにいつでも来ていいよと言える職場はとても素敵ですし、働きたいときに力を発揮できる場所があるのは素晴らしいと感じました。

 

将来的に経営者や管理職の仕事をしてみたいと思いますか。

今は会社に就職するイメージが強すぎて、そこまで考えられそうにありません。でも、経験を積んで後輩を指導する立場になってみたい思いはあるので、その延長線上で自分のやりたいことが経営者や管理職の道にあるのなら、挑戦してみるのも楽しそうだなと思いました。

 

今後、不動産業界のセミナーがあった場合にどんな内容を聞いてみたいと思いますか。

今まではそれぞれの業界の話はあっても、女性という切り口の話題はあまりなかったように感じます。岸さんのお話では女性の活躍にも触れていて、若い女性も働きやすい仕事だということがわかり、とても参考になったのでぜひ他の方の事例も聞いてみたいです。また、不動産はとても大きな業界なので、賃貸やハウスメーカーなどの細かい業種単位でリアルなお話を聞ける機会もあればいいなと思いました。

 

岸さんが取締役として第一線で活躍してきた事例を聞き、学生の皆さんの希望となったことが大変嬉しく思います。本日はご参加いただきありがとうございました。