賃貸不動産を通じて「住まう」に寄り添うメディア『YORISOU』が、全国の賃貸不動産会社の皆様に賃貸不動産の面白さや、地域への想いをお聞きする企画「Member Episode」。
今回は株式会社ヴィックスリアルエステートサービスの代表取締役の萩原さんと管理事業本部 取締役部長の照井さんに、物件オーナー様と良好な関係を築く際のこだわりについてお聞きしました。
仲介のノウハウを活かしつつ、物件の「付加価値」を最大化する管理が強み
― 御社の事業概要について教えてください。
萩原様:当社グループはヴィックスリアルエステートという社名で2008年に創業しました。賃貸仲介・売買仲介から事業をスタートし、社内の事業部の1つとして現在当社が担う管理事業を発足した経緯があります。現在は宅建業のヴィックスリアルエステートリアルティ、そして、賃貸住宅管理業を行う当社・ヴィックスリアルエステートサービスがグループ会社として活動しています。
当社の成り立ちとしては、仲介に強みを持つところから始まり、徐々にオーナー様との接点が増えてきたため管理事業にも踏み出した流れです。4年ほど前からは本格的に管理事業を行うために社員を増やし、営業活動を重視しながら管理の拡大に注力しています。
― もともと仲介から管理へと発展してきた歴史があるのですね。仲介のバックグラウンドがあるからこその御社の強みは何ですか。
萩原様:当社が何よりも大切にしているのは、物件に付加価値をつけることです。近年は物件が供給過多であり、似た間取りの部屋が複数ある中で差別化戦略が求められています。そこでエントランスをきれいにリフォームしたり、オートロックをつけてセキュリティを高めたりするなど、建物の印象を良くする提案には気を遣っています。
私自身が賃貸仲介の担当をしていた経験からも、やはり建物の第一印象は重要ですし、もし部屋がよくある間取りでも、植栽、ポストなどエントランスの印象が良ければ良い印象になる可能性は高いです。明るく清潔な雰囲気はあるか、照明の色はどうかなど、仲介の目線で物件を見たときに気になる箇所があれば積極的にオーナー様へ提案しています。
小さな積み上げから信頼を築き、賃貸経営の頼れるパートナーを目指す
― オーナー様との信頼関係を作る際、御社が大切にしていることについてお聞かせください。
照井様:当社のような中小企業は、大手のように人員が潤沢にいるわけではありません。しかし、そのぶん一人ひとりの営業がスピード感を持って動けるのがメリットだと考えています。何度もやりとりしていくうちにオーナー様にとって身近な存在となり、自然と覚えていただけることも多いです。
加えて、オーナー様から何か頼まれた際も喜んでやるのが基本的なスタンスです。「この作業をしますから、いくら頂戴します」ということではなく、そのタイミングでは売上につながらなくてもオーナー様のお困りごとにきめ細やかに対応していきます。そんな小さな積み上げで信頼関係を作ることを目指しています。
― 全宅管理の会員さんの中には、「無償管理から抜け出せない、有償への切り替えが難しい」と悩む方が多くいらっしゃいます。御社ではどのように対応していますか。
萩原様:確かに、無償管理の問題は難しい部分が多くあります。しかし、改めて当社が「無償から有償に切り替わるのはどんなタイミングだったかな」と振り返ると、やはりオーナー様が当社を信用してくれたときに任せていただける事例が多いです。
無償から有償に切り替えたオーナー様の傾向を分析してみると、意外に思われるかもしれませんが、物件に強い思い入れがあり、自ら丁寧に手入れしてきた方の場合が圧倒的に受託率が高いことがわかりました。自分自身のこだわりが詰まった物件だからこそ、誰かに任せるときに「信頼できる人でないと不安だ」という気持ちが働くのだと思います。
だからこそ当社はそんなオーナー様に何度も会いに行き、必要な資料があればお渡しし、大切な資産をお預かりする者として信頼していただけるよう努めています。
―オーナー様がこれまでやってきたことを代行するためには、信頼して任せていただくことが大事なのですね。
萩原様:もちろん管理業務を委託すればお金がかかりますが、それに代わるメリットもお伝えします。例えば法人経営をされているオーナー様なら、物件の管理に費やしていた時間が浮き、本業に集中できるようになって事業がもっと拡大できる可能性などをお話します。
照井様:当社はオーナー様と一緒に物件管理をしていくスタンスなので、「管理はすべてお任せください」ではなく、オーナー様がやりたい部分は引き続き物件に携わっていただくのがこだわりです。あくまでも、オーナー様ができない部分を私たちが管理として受託することを日々忘れないように実践しています。
萩原様:当社の管理手数料はもともと一律でしたが、現在では幅を持たせています。これはオーナーさんにやっていただく部分が多いほど、パーセンテージが低くなる仕組みです。いわばオーダーメイドの管理のような形で、管理項目の対応の有無を細かに決めているのが特徴です。
オーナー様が管理をすべて丸投げすると、物件に対して他人事になってしまうというデメリットがあります。それよりは適度にオーナー様にも管理へ携わっていただき、同じチームとしてやっていく方が入居者の皆さんにとっても良い賃貸経営ができると思います。
「心に残る接点づくり」でオーナー様の代替わりをチャンスに変える
― 管理業でよく聞くお悩みは、「オーナー様の代替わりに伴い管理が他社へ流れてしまう」というものです。代替わりへのアプローチで御社が工夫していることは何ですか。
照井様:やはり「オーナー様の記憶に残ること」が一番の方法だと考えています。ある物件のオーナー様がお子様に代替わりしたのですが、先代のオーナー様の時代から時々お声掛けしていた方がいらっしゃいました。その中であるとき「ちょっと相談したいんだけど」と言っていただき、総戸数28戸のファミリータイプの一棟物件、あわせて、駐車場50区画も管理をお任せいただいた例があります。
もちろん、他の不動産屋さんからも同じ話が来ていたようですが、その中でも当社を選んでくださったのは、オーナー様の頭の中に良いイメージを残せたからではないかと考えています。
― 「オーナー様の印象に残る」、難しいですが非常に大切なことですね。
照井様:オーナー様も色々な不動産会社と接点がある中で、当社は他と違うと感じていただくことや、何かあったときに「あの人に相談してみようかな」と思い浮かぶようにイメージを残すのは本当に大事です。オーナー様との会話で他社の営業担当の話題が出ることもありますが、そのとき名前が出るのはたいてい同じ人です。そうやってパッと最初に思い出してもらえる人物になれるよう、営業として日々接点を持つのが重要だと思います。
―オーナー様の物件を大切にする想いに徹底して寄り添い、ワンチームで管理を行うというこだわりが印象的なお話でした。小さなステップを積み重ねて信頼へとつなげていく姿勢は、きっと今後も多くのオーナー様の心をつかむことでしょう。本日は素晴らしいお話をありがとうございました。